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アカホシゴマダラ

2021-01-09

[コラム]

アカホシゴマダラ

 50年程前に奄美大島で採集しました(2♂、1♀)。青緑の羽で赤い斑点が後翅に特徴的なチョウでした。昔から奄美大島の固有種で、本種1頭でも採集できれば遠征成功と考えられてきました。ところが20年位前から神奈川、都下三多摩地区中心に目撃、採集報告され、人為的に不法に生体搬入され、採集標本の形態学的比較判定では中国産と同定され、おそらく中国より持ち込まれたと考えられました。奄美産はきれいな原色ですが、この不法アカホシは、薄ら白くぼけみがありまして一目でゾロとわかるものです。この不法アカホシゴマダラは環境省で特定外来生物となっており、国立環境研究所の侵入生物データベースにも記載されています。

 一番の問題は日本の国蝶オオムラサキと同じ食樹エノキであると云う事。しかも年に2化~3化の繁殖力がある事、オオムラサキは年に1回でエノキの葉っぱをたくさん食べます。虫屋の私、アカホシゴマダラは本来奄美に居る様に南方系と考えられ、せいぜい関東圏南部位の分布と甘く見ていましたが、長野の整形外科医も採集、栃木県の麻酔科医も何頭も目撃しているとの事でした。そして福島県でもいくつかの場所で目撃記録が出ていましたが、ついにこの日本産里山のチョウの聖地でもある長沼で、それもよりによってうちの診療所の裏庭に現れたのでした。

 なんという大胆不敵なチョウでしょうか、50年前に奄美で出会った本当のアカホシゴマダラとは(実は亜種)違い不気味な白さでミイラ男の一部みたいな感じで枝に停まっていました。これは完品な標本にして報告しなければならないと思いナイロンネットをやめ、絹網でサポっと捕まえようと用意をしていると、当院の新人看護師さんが突然「先生、患者さん待ってますよ~」と大声で、もう一人のベテラン看護師はあきれていてくれるのに。「これ捕まえたら仕事しますから待ってね」とあまり気合を入れずにシルクネット振ったら3~4シーズン使わなかったせいかアカホシネットインしたもののネットの反転が弱く網から出てしまったのでした。「あら、あら」と老人と海の状態でした。

 福島の里山にも大陸アカホシが来たと云う事は大陸新型コロナも何でも来る可能性大と云う事でしょう。長沼のオオムラサキが心配です。オオムラサキの里がゾロアカホシの里にならないように頑張りたいと思います。

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設楽 厚司/長沼クリニック(須賀川市)